前回(第3回:概念設計(コンセプトメイキング))は、商品開発の軸となる「コンセプトメイキング」について、3C分析やSTP分析、N=1思考を活用した整理法を解説しました。
コンセプトという「理想のアイデア」ができあがったら、次に行うべきは「実際の市場や競合の中で、本当に勝てるか?」を検証するマーケットリサーチです。
どんなに素晴らしいコンセプトであっても、すでに類似商品が安価で出回っていたり、ターゲット層が求めている価格帯や容量からズレていたりすると、失敗につながってしまいます。
今回は、限られた予算と時間の中で成果を出す「マーケットリサーチの手法」と「競合との差別化(USP)の作り方」を分かりやすく解説します!
1. マーケットリサーチの2つの手法(デスクリサーチ&フィールドリサーチ)
マーケットリサーチには、デスク(机上)で調べる方法と、実際の現場(店舗や消費者)で調べる方法の2種類があります。どちらか一方だけでなく、両方を組み合わせることが重要です。
① デスクリサーチ(二次情報の収集)
インターネットや公的データを使い、市場の全体像やトレンドを把握します。
- 市場規模・業界動向の把握: 農林水産省の統計データ、日本政策金融公庫の各種レポート、矢野経済研究所などの業界サマリーを活用します。
- 検索・SNSトレンド分析: 「Googleトレンド」や「Yahoo!リアルタイム検索」、Instagram・TikTokのハッシュタグ分析を行い、消費者の「生の言葉」や関心の高まりを調べます。
- ECモールでの売れ筋調査: Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどで同ジャンルのランキング上位商品やレビューの評価(特に「星2〜3」の不満の声)を分析します。
② フィールドリサーチ(一次情報の収集)
自ら足を運び、自分の目と舌で確かめる定性調査です。
- 店舗巡回(スーパー・デパ地下・セレクトショップ等): 売り場のどこに配置されているか(棚割り)、どんなキャッチコピーが使われているか、どんな組み合わせで買われているかを観察します。
- 競合商品の試食・分解調査(官能評価): 実際に競合商品を購入し、味・食感・香りはもちろん、パッケージ資材の質感、開けやすさ、表示ラベルまで徹底的に観察・記録します。
フィールドリサーチの例:筆者が実際に使用していたフィールドリサーチの例です。

- 市場調査レポートサンプル
2. 競合(ライバル)分析の進め方とチェックポイント
競合商品を分析する際は、「直接競合」だけでなく「間接競合」の視点を持つことが極めて重要です。
- プレミアムドレッシングの場合
| 競合のタイプ | 定義 | 具体例 |
|---|---|---|
| 直接競合 | 同じカテゴリー・似た価格帯の商品 | 他社の高級和風ドレッシング、オーガニックドレッシング |
| 間接競合 | カテゴリーは異なるが、同じ目的・悩みを解決する商品 | エキストラバージンオリーブオイル、ぽん酢、塩昆布、だしパック |
消費者は「ドレッシング」という枠組みだけで買い物をしているわけではありません。「野菜を美味しく食べたい」という目的を果たすために、オリーブオイルやポン酢と比較している可能性があります。
競合比較でチェックすべき5つの要素
競合商品を集めたら、一覧表(スプレッドシート等)を作成し、以下の5要素で比較してみましょう。
- 価格・内容量: 単価だけでなく「100g(100ml)あたりの単価」で計算する
- 味・機能性: 無添加、低糖質、濃厚、さらっとした質感など
- パッケージ・デザイン: 瓶・PETボトル・パウチなど容器の形態、デザインのテイスト
- メッセージ(キャッチコピー): パッケージ前面で最も強調しているキーワード
- 販路・露出場所: 高級スーパー、道の駅、自社EC、百貨店催事など
3. 競合と被らない「独自の強み(USP)」の作り方
競合を洗い出したら、自社が勝てるポジション=USP(Unique Selling Proposition:自社独自の強み)を決定します。
ポジショニングマップで「すき間」を見つける
縦軸と横軸に異なる評価基準(例:価格×機能、手軽さ×本格感 など)を設定し、競合商品を配置します。

ライバルが密集している場所(レッドオーシャン)を避け、「顧客のニーズはあるのに、誰も提供できていない空白地帯(ブルーオーシャン)」を見つけることが差別化のポイントです。
食品開発における4つの差別化アプローチ
- 素材・製法の差別化: 「〇〇県産有機野菜100%」「〇度で〇時間低温抽出」など、真似しにくい製法や原材料
- 利用シーンの差別化: 「キャンプ専用」「残業後の遅い夜食専用」など、用途を極限まで絞り込む
- 形態・利便性の差別化: 「1回使い切り小分けパウチ」「冷凍で1年間長持ち」など、使い勝手の良さ
- ストーリー・思想の差別化: 「フードロス農産物を活用」「創業100年の出汁技術」など、共感を生む背景
4. ターゲット像(ペルソナ)の精度を上げる
リサーチ結果を踏まえ、第3回で作成したターゲット(ペルソナ)をさらに立体的な「実在しそうな人物像」へ落とし込みます。
ペルソナ設定シートの例
- 基本属性: 佐藤 美咲さん(36歳)、東京都世田谷区在住、都内IT企業勤務(フルタイム・在宅勤務週2回)、夫(38歳・メーカー営業)・長男(4歳)の3人暮らし
- 平日のスケジュール: 18:30にお迎え・帰宅。19:00までに夕食準備を完了させたい(調理時間は15分が限界)。
- 悩み・ストレス: 「子どもに野菜を食べさせたいが、手間がかかる」「仕事終わりで疲れていて包丁を握りたくないが、惣菜ばかりだと罪悪感がある」
- 購買行動: 平日は近所の食品スーパーでサッと買い物、週末はカルディや成城石井でプチ贅沢な調味料をチェック。Instagramで「時短レシピ」「幼児食」をよく検索する。
ここまで具体化することで、「パッケージには『包丁いらずで15分』『国産野菜使用』を強調しよう」「インスタ広告のターゲット条件が絞れる」といった具現化策が明確になります。
5. リサーチ〜ターゲット設定のセルフチェックリスト
最後に、リサーチと差別化戦略が十分かチェックしましょう。
- □ 競合商品の「100g(ml)あたり単価」を把握しているか?
- □ 競合商品のAmazon/楽天レビューで「不満の声(★1〜3)」を確認したか?
- □ 自社が狙うポジションに、強力な大手メーカーが既に君臨していないか?
- □ 差別化要素が不十分な場合、第3回のコンセプト(自社の強み・ペルソナの悩み)へ戻って見直したか?
- □ 設定したペルソナ(N=1)が、実際に検索しそうなキーワードを3つ以上挙げられるか?
- □ 競合品と並べた時に、「なぜこの商品を選ぶべきか」が1秒で伝わる独自の強み(USP)があるか?
まとめ
マーケットリサーチは「アイデアを殺すため」のものではなく、「アイデアを確実に売れる商品へと研ぎ澄ますため」の作業です。
もしリサーチの過程で差別化の切り口が見つからなくなっても心配いりません。それは「概念設計(コンセプト)をより深く研ぎ澄ますチャンス」です。リサーチとコンセプトを行き来しながら、市場のすき間とたった1人のペルソナ(N=1)の切実な悩みが重なるポイントを見つけ出しましょう。
次回は、【第5回:原価計算の基礎知識〜売価・原価率・利益率の適切な設計法〜】をお届けします。どんなに素晴らしい商品でも、利益が出なければ事業として継続できません。売れてもしっかり儲かる原価計算の仕組みを解説します。お楽しみに!
自社でのマーケットリサーチに不安がある方はこちらからお問い合わせください。


コメント