皆様、こんにちは。
新規事業としての飲食・食品製造への参入や、既存商品の新たな販路開拓を検討する際、避けて通れないのが「法規制と許認可」の壁です。
「事業計画はできたが、保健所の手続きが複雑で止まっている」
「コンプライアンスの観点から、食品表示の基本ルールを正確に把握したい」
そこで今回は、中小事業者が食品ビジネスを展開するうえで「経営リスクを回避し、スムーズに事業を立ち上げるための基本事項」を解説します。
「食品衛生法」の理解と、保健所への事前相談
まず、食品を製造・販売する事業において、根幹となるのが「食品衛生法」です。法改正も行われるため、常に最新情報を把握する体制が求められます。
リスク回避の鉄則は保健所への「事前相談」
したがって、設備投資を行う前に、必ず管轄の保健所に図面を持参して事前相談を行ってください。
なぜ事前相談が重要か?
なぜなら、シンクの仕様、床や壁の材質、区画の取り方など、保健所の定める施設基準を満たしていない場合、営業許可が下りません。 工事完了後に基準違反が発覚するケースは少なくありません。やり直しになれば、工期遅延と追加コストが発生してしまいます。
実は違う「保健所ごとの見解(ローカルルール)」
また、食品事業者や店舗開発担当者が最も陥りがちな落とし穴が、この「自治体・保健所による見解の違い」です。
たしかに全国共通の法律(食品衛生法)や施行令は存在します。
しかし実際の運用は、各自治体の条例や指導基準に委ねられています。
具体的に見解が分かれやすいポイントの例
▸ シンクの数やサイズ:二槽シンクが必須か、食器洗い乾燥機などの設備があれば一槽で認められるか
▸ 厨房と客席の「区画」:扉(スイングドア等)で完全に仕切る必要があるか、パーテーション等で足りるか
▸ 手洗い設備の水栓:非接触型(センサー式・レバー式など)の範囲や要件
▸ テイクアウト・EC販売の許可範囲:「飲食店営業許可」の範囲内でどこまで製造・販売可能か
💡 ポイント 注意したい実務上のリスク
「隣の市の工場で許可が出たから大丈夫」という自己判断は非常に危険です。事実、筆者も同じ商品を別地域で立ち上げる際、対応に苦慮した経験があります。地域ごとに保健所の見解が異なるケースは決して珍しくありません。特に多店舗展開やFC化を目指す事業者は注意が必要です。具体的には、「出店先ごとに必ず現地保健所へ事前相談する」ルールを徹底しましょう。
手続きを効率化!厚生労働省「食品衛生申請等システム」の活用
食品事業の手続きにおいて、事業者側の負担を大きく軽減してくれるのが、厚生労働省が運用する「食品衛生申請等システム」です。

オンラインで完結・一括管理できる手続き
従来は保健所の窓口へ何度も足を運ぶ必要があった手続きが、ポータルサイトからオンラインで可能になりました。
💡 ポイント 実務・店舗展開におけるメリット
24時間いつでもWeb上から申請手続きが行えるため、業務効率化につながります。また複数店舗を展開する際、許認可情報をオンラインで一括管理できます。社内のコンプライアンス管理を進めるうえでも非常に有効です。
※申請自体はオンラインで可能です。ただし、実際の施設検査や窓口での手数料納付が必要になる場合もありますので、管轄保健所の運用方法を併せて確認しましょう。
各施設に必須となる「食品衛生責任者」の選任
営業許可施設(または届出施設)ごとに、必ず「食品衛生責任者」を1名以上設置する義務があります。これは会社の規模に関わらず、施設ごとに必要です。
資格の取得
基本的には、各都道府県等の食品衛生協会が実施する「養成講習会(1日程度)」を受講することで取得できます。近年では、eラーニングに対応している自治体も多くあります。
有資格者の活用
調理師、栄養士、製菓衛生師などの資格保有者は、講習免除で責任者になれます。社内の有資格者を把握し、適材適所に配置することも有効です。
コンプライアンスと直結する「食品表示」の厳格化
容器包装に入れられた食品を販売(卸売やECを含む)する場合、「食品表示法」に基づく適正な表示が義務付けられています。
表示ミスはアレルギー事故など重大な被害を引き起こしかねません。製品回収や企業の信用失墜といった甚大な経営リスクに直結します。
食品表示ラベルの必須項目(基本)
- 名称(一般的な名称)
- 原材料名(重量割合の高い順。添加物は明確に区分して記載)
- アレルゲン(特定原材料8品目は表示義務あり。特定原材料に準ずる20品目も表示を推奨)
- 内容量
- 消費期限 または 賞味期限
- 保存方法
- 食品関連事業者(製造者、販売者等)の氏名・名称、住所
- 栄養成分表示(熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量)
食品表示は基本項目だけでなく、「産地表示」や「国産表記」に関しても非常に厳格な基準が設けられています。BtoBやEC販売では、厳密な表示提出が契約条件となるのが一般的です。仮に表記に不備があれば、取引不成立や商品回収などの重大なトラブルになります。
販路を拡大した後に慌てないためにも、立ち上げ初期の段階で「正確な表示を作成・確認できる社内フロー」を確実に構築しておくことを強く推奨します。
(※具体的な食品表示の作成方法や注意点は、別の機会に詳しくお話したいと思います。)
まとめ:法規制の遵守とDX活用が、持続可能な事業の基盤
食品事業における法律や許可の理解は、単なる手続きではなく「コンプライアンス遵守」と「経営リスクマネジメント」そのものです。
- 他店の事例を過信せず、設備投資前に必ず管轄保健所へ事前確認を行う
- 「食品衛生申請等システム」を活用し、申請作業や管理を効率化する
- 最新の食品表示法に基づいたラベル作成体制を整える
国が提供するオンラインシステム等のツールもスマートに活用しながら、安全で強固な事業基盤を作り上げていきましょう。
次回は、第一章【企画・開発編】「売れる商品の種を見つける」と題してお届けします。
具体的には、【第3回:概念設計(コンセプトメイキング)〜「誰のどんな悩みを解決するか」〜】となります。お楽しみに!


コメント